高等教育における、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のリスクマネジメントに関する教訓

Matt Kelly

Matt Kelly

ラジカル コンプライアンス、エディター兼 CEO

ほかのあらゆるグローバル産業同様に、高等教育も新型コロナウイルス感染症を原因とする大きな問題に直面しています。 新型コロナウイルス感染症がもたらす短期的および長期的なリスクを適切に評価、管理するために、リスクマネジメントの専門家らは、優先度と働き方を切り換えて「ニューノーマル」に適応する必要があります。

どの業界もコロナ禍が続く中で大きな変化に直面し、目下抱えている問題がありますが、高等教育の現場ほど運営に支障をきたしているところはそう多くないでしょう。

3 月半ばから、世界的に専門学校や大学がキャンパスを閉鎖して学生たちを自宅に帰らせ、オンラインでの講義開講や授業実施に切り替えました。 多くの教育機関はこの春の新学期がいつもの生活に戻るとは思っていません。 大学等によってはすでに完全オンラインでの講義継続を次の秋学期に計画しているところもあれば、中にはキャンパスを 2021 年まで閉鎖することを考えているところもあります。

その余波は相当のものでしょう。こうした動きによって、運営のモデルが一夜で変わり、リスク プロファイルは覆えり、あまつさえこれまでの監視の仕組みがもはや効果を成さないわけですから。 もちろん、高等教育のディスタンス ラーニング、つまり遠隔教育に向けた取り組みは今に始まったわけではありません。何年も前から行っています。しかし、どこからともなく現れたこの新型コロナウイルス感染症という事象が突如こうした取り組みを広範的で運用できるよう急き立てているのです。

こうした状況によって、リスク保証チームが新たなリスクや改善対策を考え出し組織としてコロナ禍をどう切り抜けるか、という大変な問題に目を向けることになります。 これについては次のように、私たち皆が学ばなければならないことがあります。

高等教育におけるリスクの見通しを再評価

まず、大学や専門学校といった教育機関は、実際の問題が何であるかを評価しなければなりません。 高等教育の基本的な目標は変わりありません。学生に教育を提供すること、誠意を持って学問に励む際に守らなければならない規定を維持すること、国や地域が定める規則を遵守すること、そして予算ないし財政面の目標を達成することです。

多くの教育機関で具体的に変わったこと、それは運営モデルです。従来は対面授業形式だったのが、大規模な遠隔学習に変わったのです。 こうして、高等教育の現場におけるリスク評価が根本的な点で変わっています。 例:

  • セキュリティ。 今や、学生や職員は皆、オンラインでのやりとりに時間を費やしています。 こうした状況はプライバシー (個人を特定できる情報の保護) やデータセキュリティ (インターネットを介した機密の知的財産を送受信) 面でのリスクが高まります。 さらに、教育環境面の IT インフラストラクチャーをサイバーセキュリティ攻撃や脆弱性という大きなリスクにさらすことになります。VPN やキャンパス外からのシステムへのアクセスが新たな標準環境となるからです (学生も御多分に漏れず 新型コロナウイルス感染症が絡むサイバーセキュリティ事件の標的になっており、ハッカーから所属キャンパスの管理アカウントを装い送られる不正メールの被害に遭っています)。
  • 流動性。 キャンパスを閉鎖することで削減できる経費 (光熱・水道費の減少、スポーツイベント等での支出回避) があるかとは思いますが、一方でほかの面での出費がかさむことでしょう (留学生数の減少、スポーツ・イベントを介した収入の喪失)。 実績を元に考える予算計画は今や廃れた手法ですが、財政責任の必要性はこれまで以上に大きくなっています。
  • アカデミック・インテグリティ(誠意を持って学問に励む際に守らなければならない規定)。 ある在籍学生が課題を完了したか、またはオンラインでの試験を受けた本人であることをどうしたら確認できるのでしょうか。 アクセス管理や、課題ないし試験の性質そのものも、今はもっと配慮が必要です。
  • 学生生活。 セクハラやいじめ、メンタルヘルスはこれまでのキャンパス環境でも優先順位の高い問題でしたが、こうした問題を真摯に捉えて対応できなかった教育機関には規制コンプライアンスや訴訟のリスクがありました。 運営がオンラインになってもこうした問題は存在しているわけで、高等教育機関や代行機関は新たな方法を見い出し、こうした問題に対処することが求められています。

「現実には、組織が新しいリスクマネジメント戦略や方法を運用して新型コロナウイルス感染症に対処する頃には、リスク プロファイルはまたも大きく変化している可能性があるのです。」

新型コロナウイルス感染症という新たな戦略リスク

多くの専門学校や大学は新しい戦略リスクにも直面する可能性があります。 たとえば、19~20世紀頃に創立された老舗の教育機関は昔ながらのキャンパスにおける対面形式で教える方法に頼ってきており、近年出てきた教育機関のようにオンラインで講義をするということに精通していない場合もあります。 一部の教育業界では 新型コロナウイルス感染症によって現実となったバーチャル学習への切換えと、これによって高等教育でどのような効果があるかを検証しており、従来のキャンパスにおける対面形式の授業や講義が必要なのか疑問を呈しています。その検証内容については、ハーバード・ビジネス・レビューの この最新記事で明らかにされている通りです。

ほかの教育機関といえば、学生が自宅から授業に出席できるのであれば、運営する教育機関側はこれまで対象ではなかった地域からも学生たちを新たに取り込めるのでしょうか。 規模の大きな教育機関がこれまで以上に多くの学生を拾い上げようとするとしたら、ほかの学校等が獲得できる学生数は減ってしまうのでしょうか。 (これは別に仮定の話をしているわけではありません。 英国規制担当者ら は在籍学生数の定員をきちんと考えており、規模の大きな教育機関がほかの学校等が取り込めたであろう学生数を奪ってしまわないような仕組みができています)。

大学、専門学校、学部、管理、学生というあらゆる利害関係者が、新型コロナウイルス感染症によって伴うリスクのある新たな世界に適応しなければならないのです。

高等教育の監査チームがどのようにして「ニューノーマル」を管理できるか

高等教育は、新型コロナウイルス感染症が産業にもたらす、ありとあらゆるリスクの問題を包含しています。 では、監査チームはどのようにしてこの混乱に対処すればいいのでしょうか。 これについてはいくつかの基本的なステップがあるのでご紹介します。

1. リスク評価のトリアージ

話そうと思えば高等教育における新しいリスクや介在する変容リスクについて丸一日だらだらと話すこともできますが、監査管理職らも自身の携わる業界では同様のことがいえるでしょう。問題はまさにそこなのです。 新型コロナウイルス感染症は組織のリスク プロファイルを大きく変容させていることから、リスクマネジメントの専門家らは状況についていくのに必死です。 監査チームは優先順位をつけて、広範のリスクで先に再評価が必要なもの、後回しにできるものを判断しなければなりません。

2. 自身が闘う相手を知り、味方を理解する

組織が新たなポリシー、手続き、統制を展開すると、組織全体の従業員やほかの仲間たちは不平をつぶやくことでしょう。 当然、人によってはこうした新たなステップが押しつけがましい不必要なものだと考えます。というのも、彼らは監査チームが懸念しているリスクなどというものを起こすことはないと考えているからです。

監査チームは、ウイルスと闘っているということを常に忘れてはなりません。 仕事をする仲間たちは監査チームの味方であり、決してないがしろにはできないのです。 改善計画を履行し、補完する統制を成功裏に収めるには、監査チームは優れた対人スキルや明確なコミュニケーション、協力が不可欠で、また目標を達成しようと協力してくれている味方に感謝することが必要です。

3. 監視し、繰り返す

現実には、組織が新しいリスクマネジメント戦略や方法を運用して新型コロナウイルス感染症に対処する頃には、リスク プロファイルはまたも大きく変化している可能性があるのです。 たとえば、政府が地元企業の営業自粛日程や承認された緊急対策基金の受付終了日を変更しているかもしれません。 新型コロナウイルス感染症にまつわるリスクは常に変化しているのです。 そのため、リスクの状況を監視し、データを分析して、さらにすべてを必要に応じて隅々まで再評価する必要があります。

テクノロジーをもっと効果的に活用する

リモートで仕事しながらも、チームで動ける力を授けてくれるテクノロジーは欠かせません。 ということは、テクノロジーの能力が生かせる従来の要素はすべて、これからも当てはまるのです。

  • たった一つの、信頼できるデータ。 ことさら核心をついているといってもいいかもしれません。特に今、多くの従業員がお互いに物理的に離れて働いている状況なわけですから。 バージョン管理の問題や不完全なデータ、不正確なデータといったリスクは高まるばかり。そのため、 たった一つの、信頼できるデータを一元化されたプラットフォームで管理できればなお良いのです。
  • コミュニケーションとコラボレーションのツール。 新型コロナウイルス感染症は、人を引き離します。タイムゾーンも、働く場所も。自然と、一緒に働くという簡単な手段さえ与えてくれません。 そのため、他人と共同で使えて実用的かつ使いやすいコミュニケーション ツールを通して、また物理的に距離が離れることで失われてしまった人と交流できる「エクスペリエンス」を取り返す必要があるのです。
  • 改善を監視するプロセスが機能し、うまくいかない場合にはそのステップを警告します。 似たような路線で考えて、従業員がリモートで仕事していると、「見落とされる」タスクのリスクが高まります。 自動通知やワークフロー修正機能といったタスクを追跡する能力が不可欠です。
  • 信頼できる記録・検証メカニズム。 数々の新たなリスク、即席の手続き、緊急の統制がある状況では、こうした物事を検証し、記録することが非常に重要です。

新型コロナウイルス感染症が、私たちが持つ力を合わせて働くという能力に難題な要求をしています。なぜなら、それはお互いが感染から身を守るために物理的に距離を確保しなければならないからです。 同時に、まったく新しいリスクから、元々馴染みのあるリスクで新たな方法で台頭してきたものまで、新型コロナウイルスによって新たなリスクの問題が押し寄せています。 高等教育はその具体的な例ですが、どの産業も同様の問題を抱えています。

監査チームは優秀な人員と能力を動員して、この新たな世界でリスク評価から改善計画、検証、記録までありとあらゆる面で奮闘努力する必要があります。 その中でテクノロジーを上手く活用することが、状況を首尾よく運ぶうえで大きな助けとなるのです。 力を合わせて協力すること、工夫すること、根気強く闘うことと同様に。

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